コロナ禍で人の動きが抑制され、多くの業界が大打撃を受ける中、需要が高まっているのが物流業界です。

消費者の購買行動の変化でEC市場が急成長し、物量が大幅に増加。加えてSCM(サプライチェーン・マネジメント)の進展により物流効率化が進められ昨今ますます注目を浴びています。ECサイトの活況と物流は、今後さらに連動していくはずです。

需要が増えている物流業界ですが、その一方、人材不足は年々深刻化しており過剰サービス問題など多くの課題を抱えているのも事実です。

「物流=未来は明るい」と言われていますが、私たちの暮らしや価値観が変化していく中で今後どのような道を進むのか、これから物流業界を目指す方にとって特に気になる部分ではないでしょうか。

そこでこの記事では、物流の現状・課題・動向について詳しく解説していきます。

業界全体の動き、今後の物流業界に求められる人材にもふれていますので、転職や就職の参考としてぜひ目を通してみてください。

知っておきたい!物流業界の現状

前述したように物流業界の現状は、EC市場の活況により取扱量が増加し好調です。

その背景にあるのは、コロナ禍。巣ごもり需要の拡大でネットショッピングの利用者が急増し荷物量が右肩上がりに増加しています。経済産業省が実施した「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」によれば、物販系の分野が2019年に比べ21.71%増加しています。

                                                          出典:経済産業省令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)

さらに、国土交通省の「令和2年度宅配便取扱実績について(※)」によると、令和2年度の宅配便取扱個数は48億3647万個で、前年度から約11.9%の増加しています。 

※出典:令和2年度宅配便取扱実績について

スマートフォンやタブレットの普及によりネットショッピングがより簡単で身近になった現代では、お店で購入するよりネットの方が便利だと考える人も増えてきました。

EC市場は今後ますます成長が見込まれ、その動きに比例して物流業界も伸びていくとみられています。EC市場と物流はもはや蜜月の関係と言えるでしょう。

社会的なニーズが高まる一方で、人手不足や過酷な労働環境が問題となっている今、課題解決を目的に物流倉庫ではAIやITを使った高度なシステムを活用した自動化が進んでいます。

物流業界が抱える課題

右肩上がりで成長する物流業界ですが、現場ではいくつもの深刻な課題を抱えています。ここでは、物流業界がどのような問題に直面しているか解説します。

小口配送の増加で小口多頻度化が問題に

物流業界では、ECサイトの荷物量増加により、小口の荷物が増え「小口多頻度化」が進んでいます。それにより、一件あたりの貨物量が増加している一方で積載量が減少。個人宅への配送は、積載率が低い割に燃料費や人件費がかさみ、収益性の悪化が大きな課題となっています。

特に、再配達への対応は業務効率を低下させ圧倒的に手間がかかるため、ドライバーの負担を大きくしている部分です。国土交通省のガイドラインでも宅配ボックスの利用による再配達の削減に触れています。(参考:国土交通省「宅配便の再配達削減にむけて」)

また、ECサイトの小口配送は過剰サービスとも言われる細やかな配慮と管理が必要です。自動化できない作業も多く、従業員への負担や管理コストの増大に現場は疲弊しています。

深刻な人手不足

2020年3月に日銀が発表した企業短期経済観測(短観)調査における雇用人員判断指数※(雇用人員の過不足を示す数値)によると「宿泊・飲食サービス」に続いて運送業がワースト2位となっています。

※出典 日本銀行 企業短期経済観測

さらに従業員の高齢化も問題となっています。特に荷物を運ぶトラックドライバー不足はかなり深刻です。

国内貨物の9割はトラックで運ばれていますが、ドライバーの労働環境が過酷であるため、若いなり手が少なく高齢化が進行。

全日本トラック協会が発刊した『日本のトラック輸送産業-現状と課題-2021』によると、令和2年におけるトラック運送事業を含む自動車運送事業のドライバーの年齢比率の推移は、50歳以上が全体の4割を占めるまでになっています※。

出典:全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業現状と課題2021より」

2024年には働き方改革により、運送業にも労働条件の上限規制が課されることから今後さらにドライバー不足が加速するでしょう。

人手不足の問題はドライバーだけに限らず、ロジスティクスや事業所でも同じことが言えます。パーソル総合研究所が実施した調査「労働市場の未来推計2030」によれば、2030年、運輸・郵便に関わる人口は21万人不足すると報告されています。

                         出典:パーソル総合研究所

少子高齢化が社会問題となる日本ではどの業界も人手不足です。しかし、物流は社会インフラを担う分野ですから改題解決が急がれています。

物流業界の今後の動向

EC市場の拡大とともに物流業界の需要も今後さらに大きくなっていくと予想されます。

前述したとおり「深刻な人手不足」「小口配送による複雑化」さらに「コロナによる三密回避」などさまざまな課題解決に向け、物流センター(倉庫)の自動化はもはや避けられない事態です。

物流には「輸送」「保管」「荷役」「包装」「流通加工」「情報管理」の6大機能が存在します。これらの工程をAIやITを活用して最適化すれば、大幅な効率化が可能です。

このように物流業務全般を最新loT技術で効率化、コスト削減できる「スマートロジスティクス」の実現を目指しています。

また、配送部門も「ドローンを使った配達」や「宅配ロッカーの設置」「コンビニの店頭受け取り」「配送ロボットによる無人配送」など、さまざまな角度から課題解決を図っています。

現在コロナ禍により非対面での受け取りニーズが増加し、「置き配サービス」が拡大中です。あらかじめ指定された場所に荷物を置く「置き配サービス」で再配達率を下げることが期待されています。

今後荷物の受け取り方法はさらに進化するはずです。配達スピードや送料で競い合っていた物流各社も、利用者の利便性にフォーカスしたサービス提供へ舵を切り始めています。

国土交通省の物流への取り組み

物流は私たちの暮らしに欠かせない存在です。物流の危機は、経済や生活に大きな影響を及ぼします。そこで、国土交通省は物流業務の効率化と輸送網の集約を目指して2016年10月に「物流総合効率化法」を施行しました。

【物流総合効率化法】

国土交通省では、昨今の物流分野における労働力不足や荷主や消費者ニーズの高度化・多様化による多頻度小口輸送の進展等に対応するため、同法に基づき、「2以上の者の連携」による流通業務の省力化及び物資の流通に伴う環境負荷の低減を図るための物流効率化の取組を支援しています。[a](出典:国土交通省)

以下のような事業に対し、政府の支援が行われます。

輸送網の集約

複数が連携し、流通業務における全ての機能を有した「輸送連携型倉庫(特定流通業務施設)」の設立

輸配送の共同化

物流事業者間の連携による共同配送で業務の非効率化を解消

モーダルシフト

トラックによる輸送を鉄道や船舶に転換しドライバー不足を解消また、排出ガスを削減

これらの施策を実施する事業者は、政府から補助を受けることができます。

今後の物流業界に求められる人材

物流業界は今や、単なる荷物を運ぶだけのものではなく、運搬に付随する仕事も総括的にこなす業界へ進化しています。インターネット通販が主流になりつつある現代では、物流業界の力なくしては今の社会は成り立たないと言っても過言ではありません。

さまざまな課題はあるものの、ECの活況やスマートロジスティクスの実現など、業界全体が大きく成長する絶好のチャンスとも言えます。

このような状況で今後も多くの挑戦・進化を遂げていく物流業界に求められる人材は、「成長意欲」「提案力」「分析力」「マーケティング力」の高い人です。

成長意欲

自ら率先してチャレンジできる人。進化のスピードについていけるような成長意欲の高い人が求められる。

提案力

顧客が抱える課題を、自社を活用していかに解決へ導くかを考え提案できる力が必要。

分析力

データや客観的事実に基づき、ロジスティクスの視点から顧客や自社の経営分析ができる。

マーケティング力

視野を広く持ち、多くのことに興味を持つ人。物流企業の取引先は多岐に渡るため、それぞれの事業内容や置かれている状況を把握するスキルが求められる。

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