2020年に拡大した新型コロナウイルスの影響によって、私たちの暮らしや価値観は大きく変化しました。特に消費行動の変化は著しく、中でもEC業界の急速な拡大は物流のあり方にも大きく影響を与えました。

本記事では、EC業界の歴史やコロナ禍の動向を解説し、物流業界の今後のトレンドについて予測していきます。

ECとは? 

ECとは「Electronic commerce(エレクトリックコマース)」の頭文字をとったIT用語で日本語では電子商取引と訳されます。

インターネット上で商品やサービスを売買・契約することを指し、「インターネット通販」や「ネットショップ」、「旅行予約用の代理店」、「コンテンツ配信サイト」などもECに含まれます。

ECの内容は提供元と販売対象の違いにより3つに分類されます。

  • B to B(Business to Business)EC:法人同士の取引
  • B to C(Business to Consumer)EC:ネット通販など企業と消費者間の取引
  • C to C(Consumer to Consumer)EC:フリマアプリやオークションなど消費者と消費者間の取引

ECとほぼ同義語として使われる「eコマース」は主にB to C=企業と消費者間の取引のことです。

EC業界の歴史 

1990年代後半以降、パソコンの普及やインフラの整備に伴いインターネットの利用者が急激に増加していきます。その中でインターネットを利用した様々なサービスが生まれ、楽天市場やAmazonを始めとした様々なECサイトも誕生してきました。

日本におけるEC業界のこれまでの歴史を年代順に見ていきましょう。

1996年  多くのショッピングサイトが出現。楽天市場スタート。
1997年  楽天スーパーオークションの開始。味の素、ヨドバシカメラ、ノジマなどが通販スタート。
1998年  佐川急便が宅配事業を開始し宅配インフラが整備される
1999年  Yahoo!ショッピングモール、Yahoo!オークションがサービス開始。
2000年  本販売のAmazon.co.jpスタート。食品宅配サービスのオイシックスやGoogle日本語検索サービス開始。
2001年   電子消費者契約法が施行される。Amazonが出店型の販売形式のAmazonマーケットプレイスを開始。
2005年  個人情報保護法施行(個人情報を取り扱う事業者に対する法律)
2007年  iPhone販売開始。
2008年  特定電子メール法(迷惑メール防止法)改正(※1)。Amazonが「フルフィルメントby Amazon(※2)」を開始
2009年  Amazonが当日配送サービス、楽天市場が「あす楽(※3)」を開始。
2010年 
  • 共同購入において割引になるクーポンサイト「フラッシュマーケティング」が登場。Yahoo!が検索サービスを開始。
  • スマートフォンの登場、急激に普及する。
2011年  FacebookがEC開始。
2012年  手軽にECサイトを制作できる無料版のASPカート、かんたんECの販売開始。
2013年  ヤフー株式会社Yahoo!ショッピングの出店料金を無料にすると発表。株式会社リクルートライフスタイルが「ポンパレモール」を開始。
2015年  配送・受取サービスが充実。Amazon.JPがAmazon Payサービス開始
2016年  ZOZOTOWNがツケ払い開始。UberEATS誕生。
2017年  買取サービス「CASH」が誕生。

※1:特定電子メール法改正…広告や宣伝メールを送る場合は同意を得なければならなくなった。
※2:フルフィルメントby Amazon…商品の配送やカスタマーサービスを代行するサービス
※3:あす楽…翌日に商品が届くサービス
参考:ECのミカタ

上記の年表で注目すべきポイントは以下の3つです。

  • 2000年:Google日本語検索サービススタート
  • 2001年:電子消費者契約法が施行
  • 2010年:スマートフォンの登場と普及

2000年のGoogle日本語検索サービススタートにより、インターネットでの検索がより身近になりました。現在ではインターネット検索を総称した「ググる」という表現が浸透しており、私たちの生活に欠かせないものとなっています。

2001年には、インターネットにおける電子契約で発生するトラブルなどに対応するための「電子消費者契約法」という法律が施行され、法整備が進みます。そして2010年頃からスマートフォンが普及し始め、インターネットサービスがより身近になったことでEC市場はさらに拡大していきました。

総務省が2020年に実施した「通信利用動向調査」では、インターネット利用機器はスマートフォンが約7割となっており、今やEC業界にとってスマートフォンは欠かせない要素であると言えるでしょう。

コロナ禍におけるEC業界の動向 

新型コロナウイルス感染拡大に伴う巣ごもり需要によりEC(ネット通販)利用者が急増しています。

新型コロナウイルス拡大の影響で様々な業界が大打撃を受けましたが、生活様式の変化などによる需要の拡大で市場が成長した業界もあり、EC業界もその一つです。

経済産業省が2021年に実施した「電子商取引に関する市場調査」では、BtoC-ECの市場規模及び各分野の伸長率が21.7%と大幅に拡大していることがわかります。

一方で、対面販売がメインの実店舗は深刻な影響を受け、実店舗中心の販売形態を見直す重要性が高まりました。小売業界にとってはいかにEC(ネット通販)へ販売拠点をシフトできるかどうかが、生き残る上で大きな焦点となっています。

この動きは国内だけではなく世界的に広がり、新たにオンラインショッピングを利用し始める消費者が増加しました。もともとEC普及率が低かった国でもオンラインショッピングへの移行が大幅に進んでいます。

「パンデミックはほぼすべての業界でデジタル変化の波を3~5年加速させ、根本的かつ永続的な構造変化をもたらした―」

世界で4億人もの顧客を持つオンライン決済プラットフォーム「PayPal(ペイパル)」の最高経営責任者(CEO)ダン・シュルマン氏は、2021年2月の決済決算発表の場でこのように語っています。

参考:東洋経済ONLINE

このように、未だ新型コロナウイルスの終息が見えない中、EC市場はデジタル化の加速と共に引き続き拡大していくと予想されます。

ECから見る物流業界のトレンド

新型コロナウイルスの影響は、社会インフラである物流のあり方にも大きな影響を与えました。この項ではECから見る物流業界のトレンドを解説します。

EC事業者向け通販フルフィルメントサービスへのニーズ増加

先述したように、小売業のECへのシフトは今後も加速化すると予想されます。そこで注目されているのが、通販フルフィルメントサービスです。

通販フルフィルメントとは、EC(ネット通販)やカタログ通販などにおいて、受注業務・問合せ対応、在庫管理、物流(ピッキング・梱包・配送)、アフターフォロー(サポート、返品・交換対応など)までの一連のプロセスを代行することです。

実店舗中心の販売形態から脱却すべくECへシフトしようと考えても、多くの企業が「物流業務」に負担を感じます。

  • 受注から梱包・配送、アフターフォローに対応する人材がいない
  • 在庫を置くスペースがない
  • 物流業務がコア業務を圧迫している

このような悩みを抱える企業へ、通販物流の一部またはすべての業務を代行するのが「通販フルフィルメントサービス」です。そのニーズは今後さらに高まるでしょう。

物流業務の自動化・機械化やデジタル化

物流業界は、トラックドライバーの高齢化や少子化の影響で若手の採用がままならず人手不足が問題となっていました。

その改善策として下記のような現場での自動化・機械化、デジタル化が進んでいますが、今後もその流れは拡大し省人化が加速することでしょう。

  • IoT(モノのインターネット化)を活用した在庫管理の効率化
  • 紙伝票のデジタル化
  • クラウドシステムを活用したトラック配送・手配のマッチングサービス

新型コロナウイルスの感染拡大でマスク着用が義務付けられた倉庫内では熱中症の危険性が懸念されていました。そこで施設内にセンサーを配置して熱中症リスクを可視化できる環境モニタリングシステムなども登場しています。

このように物流業界でもポスト・コロナへ向けて新しい取り組みを積極展開し、事業の持続的成長を図る動きにシフトしています。

宅配の常識が変わる

コロナ禍では社会の構造変化をチャンスと捉え、宅配の常識も変わろうとしています。

先述したように、EC(ネット通販)の利用者が急増するとともに、宅配便の取扱個数も増加。2020年に国土交通省が発表した「物流を取り巻く動向について」では、「EC市場規模の拡大に伴い、宅配便の取扱件数は5年間で約6.7億個(+18%)増加」しているとあります。

一方で、その荷物を配送する下請けドライバーは苦境に立たされています。1日の荷物量が増加したことで、報酬は据え置きのまま労働時間が長くなり激務をこなしている状況です。

2024年には働き方改革で運送業会にも労働時間の上限規制が課されることが決定しており、ドライバー不足がより深刻化するのは確実でしょう。

そこで少しでもドライバー負担を減らし効率よく配送するための解決策として、「置き配」「宅配ロッカー」「コンビニなどの店頭受け取り」がますます強化されるでしょう。

荷物の受け取り方法が多様化すれば、物流会社や個人ドライバーの再配達の手間やガソリンなどのコストを削減できます。

物流拠点の需要拡大

ネット通販の物流に革命を起こしているAmazon.JPでは、「Amazon宅配(※1)」や「アマゾンフレックス(※2)」の割合が伸び、その利便性をさらに高めるためFC(※3)拠点を全国に増やしています。

※1:Amazon宅配…Amazonと提携する地域限定の配送業者
※2:Amazonフレックス…Amazonと契約し宅配を請け負う個人事業主(個人ドライバー)
※3:FC(フルフィルメントセンター)…ネット通販やカタログ通販における商品の受注・管理・ピッキング・配送を行う物流センター、物流拠点

この動きの背景にあるのは言わずもがなコロナ禍ですが、国内のEC事業者でもより利便性を高めるためAmazonと同じ動きへシフトすることが予想されます。

物流拠点や在庫拠点を増やし、リードタイムの短縮やコスト削減を実現できる物流企業のニーズが高まっていくはずです。このような需要に対応できれば、物流企業もECの活況に比例して飛躍するチャンスが見出せるでしょう。

関連記事:輸配送統合で輸配送費用の削減と業務負担軽減を実現!

物流を最適化するコンサルティングサービス

先ほど紹介した物流拠点の増加に伴い、物流を最適化するコンサルティングサービスも注目すべきトレンドの1つです。

EC参入企業が増えれば、物流に関する課題を抱える企業も多くなります。「今ある物流センターを効率よく回すには?」「納品までのリードタイムを短縮したい」といった相談に対し、戦略的な改善策を提案できる物流企業の役割は大きく、今後のビジネスを成功に導く鍵となるでしょう。

顧客のニーズに合わせた提案ができる物流コンサルティングはライバルとなる競合企業に差をつけられる、ひとつのポイントになりそうです。

 まとめ 

EC業界は今後まだまだ伸びていく業界です。EC業界と物流業界は密接に関係しているため、EC業界の成長と比例して物流業界もさらに伸びていくのは経済産業省などのデータから見てもほぼ確実と言っても過言ではありません。

今後は、EC業界を支えるべく通販フルフィルメントへの対応や戦略的な物流コンサルティングなどが、物流業界のトレンドとしてますます注目されるでしょう。

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