物流とは、生産者から消費者へ、商品が届けられる一連の流れのこと。そのルートには、宅配便などで身近な陸のほかに、海と空もあります。

言うまでもなく、日本は四方を海に囲まれていますよね。よって海を使った物流は、この国の社会を成立させる上で極めて重要といえます。

そこで本記事では、物流における海運について、割合や重要性、現状などを解説していきます。

海運とは?

海運とは、海上ルートを利用し、船舶で貨物や旅客を運ぶこと。海上輸送とも呼ばれます。

陸運や空運に比べて一度に運べる量が多く、かつ輸送コストは他の運輸手段よりも低いのがメリットです。一方で、積み下ろしのための港が必要だったり、政情不安によって港そのものが使えなくなったりといった点が、問題として挙げられます。

ただ、こうした問題をもってしてもメリットは大きく、今日の物流業界ではメインの運送手段となっています。

昨今の新型コロナ騒動によって港が混雑し、海運が滞っているのはニュースで見聞きした方も多いでしょう。これに起因して商品の価格が上がったり、そもそも商品が店頭に並ばなくなったりと、国内はもちろん世界全体に影響が出ています。

このように、経済活動や人々の生活を支えるインフラとして、海運は極めて重大な役割を担っているのです。

日本の輸出入のほぼ100%が海運


出典:日本海事広報協会/日本の海運 SHIPPING NOW 2021-2022

日本の輸出入は、ほぼ100%が海運によるものです。先ほどお話した海運の重要性は、この割合を見るとより分かりやすくなるのではないでしょうか。

輸送スピードは空輸に劣るものの、大量の荷物を低コストで運べるという特徴から、海運が貿易のメインになっているのです。

国内でも長距離は海運がメイン


出典:国土交通省/物流を取り巻く動向と物流施策の現状について

実は、国内でも長距離の輸送では海運がメインとなっています。上図を見ると、東京ー大阪間に相当する500km以上では、海運の割合が50%を超えています。

個人の通販利用のような小口輸送は陸運が多い一方、店頭に並ぶ食料品や日用品、そして産業のための資材や燃料などでは、大量輸送のために海運が多く使われます。

海運に使われる船の例

海運と一口に言っても、運ぶものはさまざまであり、ものによって使われる船が異なります。ここでは、海運に使われる船の例を紹介します。

製品輸送

コンテナ船

コンテナ船とは、貨物が搭載された海上コンテナを輸送する貨物船のこと。貨物は食品や衣類、電気製品から危険物まで多種多様です。

コンテナのサイズや重さには国際規格が定められていて、どこの港でも用意に積み下ろしができるようになっています。これにより作業を迅速に行えるため、コンテナ船は海運における主流となっています。

ばら積み船

ばら積み船は、穀物や鉱石などを梱包されていない状態で運ぶ貨物船のこと。船倉へ貨物が直接積み込まれ、積み下ろしにはクレーンやバキューム式の機械が使われます。

RORO船

RORO船とは、貨物を積んだトラックやトレーラーなどの大型車両をまるごと積める船のこと。船の前と後ろから、大型車両が自分で乗り(ロール・オン)・降り(ロール・オフ)できます。

資源・エネルギー輸送

石油タンカー

石油タンカーは、その名の通り石油を運ぶための船です。石油の輸送には大きな危険が伴うため、船の設計と航行には厳格な規格が定められています。

ちなみに、タンカーとは液体を輸送する貨物船を指します。

LPG船・LNG船

LPG船は、液化したプロパンとブタン(液化石油ガス)を運ぶための船のこと。LNG船は、液化したメタンとエタン(液化天然ガス)を運ぶための船のことです。

液体を輸送する貨物船なので、それぞれLPGタンカー、LNGタンカーとも呼ばれます。

旅客輸送

フェリー

フェリーとは、人や貨物を定期的に運搬する船のこと。観光でよく使われるイメージがありますが、貨物トラックも搭載しています。

日本の海運が抱える課題

日本の社会を支える海運では、以下のような課題が業界に重くのしかかっています。

船員不足

1つ目は船員不足です。特に内航海運(国内貨物の海上輸送)において深刻となっています。

この問題自体は、20年以上前から存在してきました。定年延長などでなんとか凌いでいたものの、平成28年には船員全体の54.6%が50歳以上となり、いよいよ解決の先送りができない状況になっているのです。

若い人が入ってくれば問題は解決するものの、船という狭い空間で長期間働く特殊な勤務形態などが要因で、30歳未満は全体のわずか15%となっています。

この状況が続くと、高齢の船員が大量に引退したタイミングで、海運業務を行えなくなる恐れがあります。

参照:国土交通省/内航・外航船員の確保・育成

脱炭素化

2つ目は脱炭素化です。社会にとって必要不可欠だからこそ、海運がこの問題に取り組む意義は大きいといえます。

2020年3月、国土交通省は「国際海運のゼロエミッションに向けたロードマップ」を策定しました。エミッションとは排出のこと。温室効果ガスを排出しない、エコな船の就航を目指すものです。

現在、電気・水素燃料・アンモニア燃料といった新しいエネルギーの活用が、海運大手を中心に進められています。

海運の課題解決へ向けた取り組みの例

上記の課題解決に向けて、具体的にどんな取り組みが考えられるのか。例を3つ紹介します。

労働環境改善

船員不足解決のために、労働環境の改善は急務といえます。

船内で長期間過ごすことになるため、作業も生活もしやすくなければ、人材の定着はありません。また、人間関係についてのヒアリングといった、ソフト面での改善も必要です。

ただでさえ人手不足の状況で改善策へリソースを割くのは難しいため、企業だけでなく国や自治体とも連携しながら取り組むべきでしょう。

IT導入による業務効率化

船員不足解決へ向けた2つめのアプローチが、IT導入による業務効率化です。

例えば川崎汽船などは、2021年から自動運行システムの開発に乗り出しました。自動運行でなくとも、運行のサポートシステムも開発されており、船員の負担軽減のみならずミス防止にも役立つと期待されています。

また、港湾では積み下ろしにロボットを導入したり、通関業務などを電子化したりする取り組みが行われています。

石油エネルギー削減

脱炭素化に向けては、新エネルギー活用だけでなく、石油エネルギー削減も進められています。

具体的な方法としては、航行ルート最適化や入出港時刻調整、減速運行といった航行技術の向上、高性能な船体の開発などがあります。港湾でのロボット導入なども、石油エネルギー削減につながります。

まとめ

今回は物流における海運について、その重要性や割合、課題などを解説しました。

貿易にも国内輸送にも、海というルートは欠かせません。海運の発展は、産業や生活をより豊かにします。そのためには、今ある課題を解決した上で、持続性のある業界へと変革させていく必要があるのです。