近年、物流やビジネスの現場で「ロジスティクス」という言葉が頻繁に使われるようになりました。
しかし、「ロジスティクス」と聞いてもどのようなものかイメージが湧かない方も多いのではないでしょうか。また、ロジスティクスと同じ意味合いで使われる物流との違いも気になりますよね。
そこで本記事ではロジスティクスの概念から物流との違い、メリットなどを解説します。
ロジスティクスとは?
ロジスティクスとは、最近生まれた言葉ではなく実は昔から存在しています。そもそも軍事用語として日本語では「兵站(へいたん)」と呼ばれていました。
戦場において必要となる軍需品を調達し、保管して前線へ補給することは、軍事面の強化に効果的です。一方で、必要物資が届かなければ病気や飢えをまねき、軍事力の低下につながります。このように、必要なものを調達、保管、給する役割を担っているのがロジスティクスです。
先の太平洋戦争では、日本軍兵士の死者は200万人を超えました。実はこの大半が、ロジスティクスの弱さに起因する餓死や戦病死によるものでした。
当時の日本にロジスティクスの概念があれば、結末は変わっていたかもしれません。
日本ロジスティクスシステム協会では、ロジスティクスの概念を下記のように定義しています。
物流の諸機能を高度化し,調達,生産,販売,回収などの分野を統合して,需要と供給の適正化をはかるとともに顧客満足を向上させ,あわせて環境保全及び安全対策をはじめ社会的課題への対応をめざす戦略的な経営管理。
「物流」は、包装、輸送、保管といった諸機能の総合的管理であるのに対し、ロジスティクスは、その「物流」に加え、調達や生産といった分野を管理の対象とする、より上位の統合化を志向した概念であると考えられます。
かつては戦場で使われていたロジスティクスですが、現代では物流ビジネスの世界で、調達から保管、供給、運営や管理全般を担う役割として意味づけられています。
トータルロジスティクスとは
物流現場では「トータルロジスティクス」も欠かせないサービスの1つです。
「トータルロジスティクス」とは、生産者が生産した原材料が製造・加工され、消費者の手に届くまでを一本のパイプのように見立て、物流全体の最適化を図ることです。
調達、保管・管理、輸送・配送まで、全体を見据えた物流システムを構築するサービスを指します。
ロジスティクスと物流の違い
ロジスティクスと似ている言葉に「物流」があります。両者を同じ意味合いの言葉として捉えがちですが、ロジスティクスは物流よりも大きな役割を担っています。
物流とは、物を生産者から消費者のもとへ運ぶ一連の流れを意味します。あくまでもモノが移動する流れを指し、原料の調達や加工、在庫の無駄を省くなどの役割はありません。
しかしロジスティクスは、原材料の調達から管理、運営、加工、在庫調節、コスト削減など、経営管理も含んだ概念です。
簡単に言えば、物流は「モノの流れ」、ロジスティクスは「物流効率化の取り組み」を意味します。
ロジスティクス導入が求められる背景
これまで多くの企業では、営業と物流部門が切り離されていました。営業は売上を上げ、物流はただモノを円滑に届ける、というように役割分野がなされていたのです。
当然、適切な在庫管理、最適なタイミングでの発注・発送、在庫調達から配送までを一貫して管理し、効率的な運用を目指すという理念はありませんでした。
そのため、在庫や配送に無駄が生まれ大きな損失を被っているという実態に気づかないまま、経営がなされていたというのが実態です。
在庫を例に解説しますと、営業が気にするのは機会損失を逃す欠品で、過剰在庫は仕方がないと考えます。一方で、物流部門が気にするのは円滑に商品を届けることで、在庫まで考えが及びません。多くの企業で無駄な在庫が発生している原因は、このせいなのです。
しかし、営業から物流までを一元的に管理運営すれば、このような無駄が生まれません。
ロジスティクスを導入することで、これまで見えなかった無駄を可視化して徹底的に排除することが可能になるのです。
経済が長期にわたって低迷する近年、物流コストの削減に取り組む企業が多くなりました。このような背景から、効率的な物流システムを構築できるロジスティクスの導入が求められているのです。
ロジスティクスの主な仕事内容
ロジスティクスの主な仕事内容は下記のようなものです。
出荷、受荷係 | 荷物の入出庫を管理する。入出庫に伴う出荷、受荷の伝票処理と管理など。 |
物流提案営業 | 配送時間の短縮や製品価格、コスト削減に直結する最適な物流ネットワークを構築する。 |
物流企画・管理スタッフ | 適切な商品在庫の管理、物流業務の最適化を図る。 |
貿易事務員 | 海外との輸入や輸出業務に関わる業務。税関に提出する各種資料の作成や注文書の作成、海外への支払い手続きなど。 |
ロジスティクス経営士 | 経営の視点からロジスティクスの各機能を総合的に構築し、戦略の立案をする。 |
物流技術管理士 | 物流システムの設計や計画、分析、改善までトータルで担う。 |
上記はロジスティクスの仕事の一部です。他にもたくさんの業務があります。
ロジスティクス導入で期待できる4つのメリット
ロジスティクスを導入することで期待できる、4つのメリットを解説します。
在庫数を適正化できる
1つめは「在庫数を適正化できる」です。ロジスティクスによって在庫の無駄を省き、適切な在庫管理ができれば、発注漏れや欠品を防止できます。
また、在庫を適正に維持することは、無駄な生産や過剰在庫抑制につながり、生産計画が適切に行われるようになります。
物流コストを削減できる
2つめのメリットは「物流コストを削減できる」ことです。
ロジスティクスの導入でこれまで見えなかった無駄な在庫の生産や移動、保管がなくなれば、大幅なコストの削減が期待できます。
例えば、当社の「在庫マネジメント」の事例では、WMS(倉庫管理システム)を活用した製品在庫の全社的な一元管理化や、支店を経由せず、工場周辺に用意する倉庫から全国の店舗に製品を直接供給するなどの提案で、サプライチェーン上の在庫を大幅に圧縮することに成功しています。
これにより、横持ち輸送コストを大幅に削減することができました。
このようにロジスティクスを最適化すれば、無駄な物流コストをカットすることが可能です。
営業担当者がコア業務へ注力できる
3つめは「営業担当者がコア業務へ注力できる」ことです。
ロジスティクスがうまく機能していない企業では、営業担当者が在庫管理を行っているケースが少なくありません。
営業担当者は販売の機会損失となる「在庫の欠品」を恐れるため、過剰在庫になりがちです。しかし在庫が多すぎると、その在庫を捌くことに注力しなければなりません。これでは営業にも無駄が生じ、パフォーマンスが低下してしまうでしょう。
ロジスティクスで在庫管理を適正化すれば、営業担当者は在庫管理をする必要がなくなり、コア業務に専念できます。その結果、生産性の向上や業務効率化の実現につながります。
顧客満足度を高められる
4つめのメリットは「顧客満足度を高められる」ことです。
効率のいいロジスティクサービスは、安定した在庫の供給につながります。「必要なときに必要な分だけ届けられる」状態になれば、顧客の信頼度が増し満足度を高められるでしょう。
また、物流の最適化は配送スピードの向上にもつながります。希望するタイミングで破損なく手元に届くことは、顧客満足度を高めるのに効果的です。
ロジスティクスとSCM
ロジスティクスを語る上で欠かせない言葉に「SCM(サプライチェーンマネジメント)」があります。サプライとは供給を意味し、チェーンは鎖のことです。
サプライチェーンとは原料の調達から生産、販売、商品供給までに行われるさまざまな業務や企業のつながりを鎖にたとえたものです。
商品が生産され消費者の手元に届くまでには、多くの企業が関わっています。この供給活動に関わる企業連鎖がサプライチェーンなのです。
SCM(サプライチェーンマネジメント)は、日本語に直訳すると「供給連鎖管理」となり、商品供給に関わるすべての企業が連携、総合管理されていることを指します。
ロジスティクスはSCMの1つです。ロジスティクスが企業や社内などの狭い範囲の物流を対象範囲にしている一方で、SCMは、企業の垣根を越え、原材料メーカーや卸売業、小売店など商品供給に関わるすべてのプレーヤーを含めたサプライチェーンを対象範囲にしています。
これまで商品を消費者へ届けるには、企業ごとで物流が発生していました。しかし、近年厳しい経済低迷が続く中、各社が協力し最適な物流システムを構築することで、費用対効果を高める動きへシフトしています。
このような物流最適化は企業の利益を高める近道として注目されていますが、他の企業も巻き込んで改善する必要があり、うまくいっていない企業も少なくありません。
SCMを成功させるには、当社のような物流企業が旗振り役となり、サプライチェーン管理の代行者として機能していくことが重要です。
富士ロジテックホールディングスのロジスティクスサービス
当ブログを運営する富士ロジテックグループでは、従来型の物流サービスにとどまらず、新しいコンセプトを折り込んだお客様の多様なニーズにお応えするサービスを展開しています。
「お客様のサプライチェーンを、お客様の目線で捉え、サプライチェーンの管理者として一括した最適化を実現し、継続すること」と考えお客様を取り巻く周辺環境も含めたサプライチェーン全体に対する真に最適なソリューション(解決策)を提案しています。
当社の強みはお客様の抱える課題に合わせたご提案と、サービスのカスタマイズができることです。展開するサービスは下記のように多岐にわたりますので、国内外複数の拠点を活用し、お客様に最適な物流サービスを提案・ご提供しています。
- 物流コンサルティング
- 倉庫サービス
- 文書保管
- 通販物流
- 運輸サービス
- 通関業務
- 国際複合輸送
- システム開発及び保守運用
- 動物用医薬品物流
- 医薬品SCM
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