ネット通販の拡大によって、企業や個人宅への配達ニーズは高まる一方です。こうした中、大きな課題を抱えているのがラストワンマイル配送です。物流業界のみならず、さまざま企業がこのラストワンマイルの課題解決に向けて、開発や取り組みを行っています。

しかし物流業界で度々使われる、「ラストワンマイル」という言葉について、実はどういう意味なのかよくわからないという人も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、ラストワンマイルの言葉の意味や市場規模などを紹介し、課題や展望についても解説していきたいと思います。

私たちの生活に欠かせないラストワンマイルの必要性を今一度考えてみましょう。

物流におけるラストワンマイルとは?

ラストワンマイルは英語では「last one mile」、直訳すると「最後の1マイル」という意味です。もともとは通信業界で使われている言葉でしたが、物流業界でも活用されるようになりました。

物流におけるラストワンマイルは距離を示すものではありません。物流の最終拠点から企業や個人宅へ配送することをいいます。いわゆる宅配便のことです。

ネット通販が拡大する現在では、商品を消費者へ届けるラストワンマイル配送が欠かせない存在となっています。

ラストワンマイルの市場規模

矢野経済研究所が2021年に国内のラストワンマイル物流市場を調査した結果、2020年度の物流市場規模を前年度比127%の2兆5,380億円と推計しました。

新型コロナウイルス感染拡大により在宅率が増加、ネット通販の需要が高まった影響から、大きく伸長する結果となっています。

ラストワンマイルが伸びた背景には、主に下記の3つの要因があります。

ネット通販の需要拡大による宅配便取扱個数の増加
ウーバーイーツなど飲食店の「配達代行サービス」の拡大
在宅配食サービスやネットスーパーの利用拡大

必要な商品や好きな食事をいつでもオーダーでき、自宅まで届けてもらえるサービスは、2020年4月から5月の緊急事態宣言下において急激に拡大しました。今後は料理やネット通販以外の分野でも拡大していくことが予想されています。

競争が激化中

上述したように、ネット通販のみならず飲食店による食事の提供など、ラストワンマイル市場は激化の一途をたどっています。

例えば、2019年ローソンはウーバーイーツに出店する形でデリバリーサービスを開始、2021年の8月東京オリンピックのサッカー日本代表戦では、ウーバーイーツ経由でからあげクンや酒、デザートの注文が殺到し目が回る忙しさとなりました。

コロナ禍の後押しもあり、デリバリーサービスを展開する企業が急増し、ラストワンマイル市場も急激に拡大しています。

また、amazonでは個人ドライバーに直
接荷物の配送を委託する「アマゾンフレックス」やアマゾンが地域ごとに委託する配送業者の「デリバリープロバイダ」を猛烈に強化。自社の配送網を拡大し自前物流を加速させたことは、大きな話題となりました。

このように、コロナ禍でラストワンマイル市場が拡大する中、小売業界も自前物流をスタートし、即日配送や配送料値下げなどの競争が激化しています。

ラストワンマイルの抱える課題

ネット通販の活況に反して、ラストワンマイルを支える物流・配送業者は苦境に立たされています。
ここからは、ラストワンマイルが抱える課題を3つ解説します。

人手不足

荷物が過剰に増える中、問題となっているのがドライバーや配送に関わる人手不足です。届けなければならない荷物に対し、ドライバーの数が足りていません。背景にあるのは、言わずもがなコロナ禍です。

ネット通販の利用者が急増した裏で、物流業界や配送業者は深刻な人手不足に陥っています。

<h3>業務量増加</h3>
業務量の増加も、大きな課題です。上述したように人手不足が加速し、現在活躍するドライバーひとりひとりの負担が増加しています。

単に荷物が増えただけではなく、不在宅への再配達も悩ましい問題です。利用者数が増えれば増えるほど、不在による再配送率も高まりドライバー負担が増加します。

2021年6月国土交通省は、2021年4月の宅配便再配達率が約11.2%、配達の約2割が再配達されるという結果を発表しました。

再配達は業務量増加に加え、燃料費や人件費などのコストが余計にかかり大きな損失となっています。

※参考:国土交通省 宅配便の再配達削減に向けて

物流コスト増大

前述したように、再配達は物流コスト増大を引き起こす要因です。他にも多品種・小ロットでの輸送に伴う積載率の低下、ガソリン価格の高騰により、物流コストの上昇につながっています。

物流コストが増加するとしわ寄せがいくのは、末端の下請けドライバーです。荷物が増えても報酬は据え置きのまま。業務量の負担が増加する一方で、収入が全く増えないという事態を引き起こしています。

これではドライバーの担い手が増えず、人手不足が進行しさらに業務負担が増えるという悪循環に陥っています。

ラストワンマイルの展望

ここまでラストワンマイルの抱える課題について解説してきましたが、宅配の常識は変わり始めています。

配送管理システムによる効率化や、宅配ボックスの普及、配送用ロボットやドローン配送の導入など、荷物の受け取り方法も多様化しています。

配送管理システムによる効率化

ネット通販の拡大に対応するために登場した配送管理システムは、コスト削減やリードタイムの短縮を実現します。

配送管理システムを利用すればトラックの配車や移動データなどを管理し、輸送状況を可視化できます。荷物の配送状況確認や、ドライバーの業務状況管理も可能なため、物流業務全体の効率化や生産性向上が目指せます。

これまで不透明だった部分がクリアになるため無駄がなくなり、コスト削減に大きな効果をもたらすでしょう。

エリア宅配ボックス設置の拡大

コロナ禍で浸透しつつあるのが、エリア宅配ボックス設置です。
不在時でも駅やマンションなど生活動線上に設置された宅配ボックスを利用して、荷物を24時間受け取ることが可能です。

商業施設やマンションなど全国に設置され、中には冷蔵機能を備えたものも登場しています。仕事帰りや買い物のついでに受け取れるため、自宅でいつ届くかわからない荷物を待つよりも効率的です。忙しい現代人にあっているサービスでしょう。また、非接触で受け取れる点も魅力です。

配送用のロボットやドローンの導入

人手不足が深刻なラストワンマイルに置いて、無人化・省人化は将来必ず必要になるとして、最新テクノロジーへの期待が高まっています。

例えば、配送用ロボットは、昼夜問わず人間に代わってロボットが荷物を運んでくれます。また、ドローン配送では、小型の無人飛行機を使って商品を届けられますから、災害など緊急時にも役立つと注目されています。

ドローン配送はルートを設定すれば自動で飛んで行きますので、交通渋滞の影響がありません。直線的な移動が可能なため、届けるスピードも早まるでしょう。ロボット配送やドローンを導入することで、人手不足を解消しながらサービス品質の向上を実現できます。

まとめ

本記事では、物流におけるラストワンマイルの意味や市場規模、抱える課題について解説しました。

今後もネット通販やウーバーイーツなど配達代行の市場は、より拡大していくことが予想されています。現在抱えている人手不足や業務量増加、物流コスト増大などを解決するには、最新テクノロジーで省人化を目指す一方で、私たち消費者の意識改革も必要です。

できるだけ宅配ボックスや置き配を利用し再配達を減らす意識を持てば、ラストワンマイルにかかる負担を減らせるはずです。

ラストワンマイルは物流企業だけの問題ではなく、生活に密接するものですから私たちも利用者として関心を持ち、協力していきたいものですね。