国内サプライチェーンの最適化を実現する手段として注目を集める「LTL輸送」。コスト削減、物流効率化に効果があるとされていますが、LTL輸送についてよくわからないと感じている方も多いのではないでしょうか。
重ねて、LTL輸送を語る上で欠かせない物流用語「FTL輸送」との違いを尋ねられたら、答えに窮する方もいるでしょう。
そこで本記事では、LTL輸送の意味やFTL輸送と違い、現状や課題について解説していきます。
LTL輸送とは?
LTL輸送とは、「Less than Truckload」または「Loose Truckload」の略です。
「混載トラック輸送」や「小口トラック輸送」ともよばれ、トラックやトレーラー1車に満たない量の貨物を輸送することをさします。1台のトラックに複数のお客様の荷物を一緒に積載して輸送するサービスを混載といい、LTL輸送のメインとなっています。
混載輸送はいわゆる相乗りのようなものです。1台のトラックに満たない荷物をその都度運んでいては、物流コストが上がったり非効率になったりします。
しかし、LTL輸送により混載すれば、トラック1台の積載率が高くなり、輸送効率も向上。共同でトラックを使うことで、輸送コストを削減することができます。
また、トラックを貸し切るほどではない、パレット1枚分に満たない量を運びたい場合もLTL輸送が便利です。
LTL輸送は、EC市場と物流アウトソーシングの増加により、世界的に需要が拡大中です。
LTL輸送とFTL輸送の違い
LTL輸送の対義語に、FTL輸送があります。
FTL輸送とは、Full Truckloadの略でトラック(トレーラー)1車で運ぶこと(またはその量があること)です。フルトラック積載ともよばれています。
LTL輸送とFTL輸送の違いは、トラック1台を満たす量があるかどうかです。また、コンテナ単位で海上輸送される方法にFCL(大口貨物)もあります。
ちなみに、Amazonフルフィルメントセンターでは、パレット輸送(LTL)およびトラック配送(FTL)、大口貨物(FCL)から荷物の量に合わせて選択できるようになっています。
LTL輸送の現状~ニーズの変化を受け増加~
前述した通り、LTL輸送は世界中でニーズが増加しています。ここからはLTL輸送の現状について解説します。
多頻度小口化が近年の傾向
近年、消費者ニーズの多様化により多頻度小口配送が増加しています。多頻度小口配送とは、ひとつの納品先に対し少量の荷物を多頻度にわたって配送することです。
在庫を切らさず必要なときに必要な量を配送できるメリットがあり、幅広い品揃えが求められるコンビニやスーパーで取り入れられています。
また、ネット通販の利用が増えたことで、個人への宅配が増えているのも多頻度小口化が進んでいる要因です。
国土交通省が令和元年に公表したデータによれば、宅配便取り扱い個数は43億2349万個に達しており、過去最高を記録。現在も増加傾向にあります。
要因はECの発展と物流アウトソーシングの拡大
前項でも解説したとおり、多頻度小口化でLTL輸送にさまざまな課題が生じているのは、EC市場の発展と3PLなど物流アウトソーシングの拡大が要因です。3PLとは、企業の物流業務の一部または全てを第3者へ委託することです。
宅配便は取り扱い個数が年々増加し、特に令和2年は新型コロナウイルスの影響による外出自粛をうけEC市場が拡大したことで、宅配需要が急増しました。
国内の貨物輸送は9割がトラック輸送となっていることから、EC市場の受け皿となる物流の負担が増加しています。
LTL輸送増加による物流現場の課題
ここからはLTL輸送増加による物流現場の課題を解説します。
ドライバーの負担増加
LTL輸送はトラックの輸送回数が増えているため、トラックドライバーに負担がかかります。私たちの身近なところでいえば、宅配便です。多頻度化も合わさって、消費者に荷物を届けることが多くなった宅配現場では、不在時による再配達の増加が社会問題となっています。
不在があれば、再度その家を訪れなければならず、ドライバー負担は増加。荷物の個数に対してドライバーの数も足りていませんから、ひとりのドライバーが担う業務量も増え、負担となっています。
物流コストの高騰
多頻度小口化など、一人ひとりの消費者に荷物を届ける個数が増えたことで、配送料や人件費がかさみ、物流コストが上昇。物流コストは商品価格へ反映されるため、結果的に全体の売り上げに影響を及ぼしています。
また、環境保護の観点からトラックや車の排気ガスが、問題視されています。配送回数が増えるとトラックの走行時のCO2の排出量が増加するため、環境への負荷が大きくなっている点も課題のひとつです。
LTL輸送にまつわる課題を解決するには
LTL輸送にまつわるさまざまな課題を解決するには、下記の3つが有効と考えられています。
- 配送ルートの見直し
- 拠点配置の最適化
- 物流システム導入
それぞれ詳しく見ていきましょう。
配送ルートの見直し
まずは、配送効率化に向けて配送ルートの見直しを検討します。
配送物量や道路事情の変化、走行距離を細かくチェックし最適なルートを選定します。
交通渋滞や登り坂が多いルートは燃費に影響があり、物流コストが増加するため避けなければなりません。
また、道路事情は日々異なるため、毎日同じルートを回る状態では、無駄が生まれてしまいます。
道路状況の把握と作業の見直しによって、最適なルートをいくつか選定し、その日の状況によって臨機応変に対応できるようなマニュアルを準備しておくなどの対策が必要です。
拠点配置の最適化
次に、拠点配置の最適化もLTL輸送の課題解決に有効です。
例えば、同じような倉庫をいくつも設置していることから、在庫が重複し横持ち配送などが発生していた場合、輸送動線に無駄が生じてしまいます。
そこで、DC(在庫型センター)およびTC(通過型センター)機能を兼ね備えたハブ倉庫を設置し拠点を集約することで、トラックの積載率も上がり輸送コストや入出荷コストを低減できます。
あくまでも一例ですが、このように拠点を最適化することで、管理も楽になり、トラックの輸送効率・積載効率の向上などを実現できます。
物流システムの導入
最近では、輸送ルートの選定をアプリやシステムを使って行えるようになりました。このような物流システムは物流業務を効率化・最適化できる便利なツールです。
WMS(倉庫管理システム)や荷物の出荷から配送完了までを管理するTMS(配送管理システム)などは、多くの物流企業が導入しているシステムです。
また、輸配送の管理を行う運行管理システム、輸配送中の荷物を追跡できる貨物追跡システムなども活用されています。
物流システムを導入すると、あらゆる物流業務がデータ化され業務全体を可視化できる点がメリットです。見える化によって、ボトルネックの発見やコストの見直しにつながります。
また、システム導入によってこれまで人の目や手に頼っていた業務を自動化できます。従来よりも少ない人手で業務遂行できますし、新人でも業務品質を担保できる点もLTL輸送の課題解決に最適です。
富士ロジテックグループの事例紹介
当ブログを運営する富士ロジテックグループでは、荷主企業が抱えるLTL輸送のさまざまな課題解決に取り組んでいます。
ここで、東西2拠点から出荷する物流体制の構築、拠点でのオペレーション管理、集約化に伴う輸配送網の見直しなどに推進した例をご紹介します。
大手食品メーカーH様の事例
H社様は、東日本エリアを中心に事業を展開し、同エリアからの支店・店舗への製品供給は、在庫機能を有する「関東DC」と呼ぶマザーセンターが行っていました。
商圏の拡大を目指す西日本エリアについても、工場や「関東DC」が一部、物流機能を担っていたため、発注から納品までのリードタイムに競争力がない、といった問題を抱えていました。
そこで当社では新たに「関西DC」の開設をご提案。当社の既存拠点を活用、庫内オペレーションも一元管理する体制にすることで、初期投資負担や運営コストの軽減を目指しました。
その結果、店舗や支店からの受発注業務についても、当社が業務を代行する体制に切り替えたほか、新たにウェブを活用したオーダーシステムを導入したことで、受注締め切り時間の延長なども実現。リードタイムの向上につながりました。
このように拠点でのオペレーション管理や集約化で物流システムを最適化することは、コスト削減や品質向上、LTL輸送の課題解決につながります。
まとめ
本記事では、LTL輸送の意味やFTL輸送との違い、現状や課題について解説しました。EC市場拡大によって進んだ多頻度小口化輸送によるデメリットは、物流業界全体の問題です。
しかし、どの企業も配送ルートの見直しや拠点配置の最適化、物流システムの導入を検討し、課題解決に取り組んでいます。
EC市場は今後も伸びていく業界ですから、LTL輸送に問題を抱える企業も増加するでしょう。このような企業に対する改革プランを企画・提案する事業はニーズが高まる分野です。
当社でもLTL輸送に課題を抱える企業への物流コンサルティングサービスに力を入れています。物流営業に興味のある方は、本ブログを運営する富士ロジテックグループで働いてみませんか?
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