物流の現場でよく聞く言葉に「調達物流」があります。いわゆる物流用語ですが、意味や業務内容などがわからず、本記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、調達物流の業務や物流の流れを解説し、調達物流企業の抱える課題についても触れていきます。

調達物流とは?

調達物流とは、生産に必要な原材料・資材の調達・工場へ運び込む際に発生する物流活動を指します。

物流システムの一番川上の部分です。

調達物流にはじまる物流の流れ

物流にはさまざまな工程や流れが存在します。

動脈物流

動脈物流とは、原材料の調達から生産・製造を経て、消費者のもとへ届くまでの一連の流れを指します。

心臓から出た血液が末端の血管まで届く動脈に例えて「動脈物流」と呼んでいます。調達物流・生産物流・販売物流が、動脈物流に含まれます。

消費者が必要なタイミングで商品を届けるには、まず商品の供給管理が徹底されていなければなりません。注文が入った際に、生産が間に合っていなければリードタイムが長くなり機会損失を招く恐れがあります。

調達物流・生産物流・販売物流がそれぞれ連携することで、製造販売を円滑に進められます。

調達物流

先述したように、調達物流は原材料を調達する際に発生する物流活動のことです。製造に欠かせない、資材や部品をサプライヤーから工場へ運ぶ役割を担います。

生産物流

生産物流とは、調達した資材や部品を自社の工場内や支社、倉庫へ運ぶ際に発生する物流活動のことです。

「社内」「支社」「工場」「倉庫」間を移動する際の物流は全て、生産物流に含まれます。

販売物流

販売物流とは、製造された商品を消費者へ届けるために発生する物流を指します。メーカーの倉庫から販売店や卸元へ商品を運び入れるにも物流が必要です。

最近ではインターネット通販によって、倉庫から直接消費者へ商品が届けられることもありますが、この際に発生する物流も販売物流に含まれます。

静脈物流

静脈物流とは、消費者から返品や回収などによって商品が物流倉庫やメーカーに送られる際に発生する物流活動を指します。

動脈とは逆方向に流れるのが特徴です。体の中を巡り末端まで届いた血液が、また心臓へと戻っていく様をなぞらえて「静脈物流」と呼んでいます。

静脈物流は主に、回収物流・返品物流・廃棄物流が含まれます。

回収物流

回収物流とは、初期不良やリコールなどが原因で商品に不具合があり回収することを指します。また、販売店で売れ残りを回収することも回収物流です。

他にも、使用済みパレットの回収、段ボールなどの梱包資材を回収することも、回収物流に含まれます。

返品物流

返品物流とは、何らかの理由で消費者から商品が返品される、商品不具合で店舗から返品される際に発生する物流を指します。

多くの場合、商品出荷時とは異なる形で返品されるため、再度発送するには、入念な検品が必要です。また、不具合の場合はメーカーや生産工場で確認するため、さらに倉庫から返送する必要があります。このような物流も返品物流に含まれます。

不良品や検品ミスでの返品は、送料などの負担が増加する傾向が高く返品業務も労力がかかります。発送時、検品漏れが起こらないようにするだけでも、コストダウンに繋がります。

廃棄物流

廃棄物流とは、廃棄にともなう物流のことです。

家電リサイクル法によって廃棄される家電や空き缶やペットボトル、新聞紙や雑誌などの古紙の回収も廃棄物流です。
環境保護、SDGsの観点から、近年、資源の有効活用が重要視されています。アパレルメーカーでも、洋服のリサイクルを促している企業が増えてきました。このような静脈物流は、企業活動に欠かせない要素となっています。

調達物流の主な業務

ここからは調達物流の主な業務を解説します。

調達

まずは、生産・製造に必要な原材料・資材を国内外から調達します。調達先が海外の場合は、船や飛行機を利用して運びます。

保管

入荷した資材などを一時的に倉庫に保管することも、調達物流の業務の1つです。

例えば海外から輸入するには、かなりの時間を要します。生産に必要な時に、必要な分だけ供給するには、国内倉庫で一時的に保管しておく方が効率的です。

工場の生産に合わせてすぐに出荷できるよう、体制を整えて保管する必要があります。

配送

出荷指示に従って、各配送先に資材・部品が配送されます。数量の間違いがないか確認し、出荷します。

この際、在庫管理も重要な業務です。必要な量を必要な分だけ供給し続けるには、徹底した在庫管理が必要です。

調達ルートやスキームの最適化

調達ルートやスキームの最適化も調達物流の業務です。
物流コストを削減するため、各供給会社(サプライヤー)から倉庫まで、倉庫から工場までの調達ルートを最適化するのも調達物流の役割です。

例えば調達する資材や部品は1つではないため、各所から生産工場に1日何度もトラックが到着するのも、荷受け作業の負担が大きくなります。

そこで、一旦保管する通過型の物流倉庫を経由し、そこで仕分けして各所へ配送する方法が効率的です。

このように、調達物流はただ原材料を工場へ運ぶだけではなく、計画性を持って届けることが求められています。

調達物流が適切に行われることによるメリット

先述した通り生産の現場では、必要な物を、必要な時に、必要な数だけ届けることが求められます。いくら生産・製造に必要なものでも、必要量以上に入荷すると、工場に保管スペースを確保しなければなりません。

かといって、全く在庫のない状態では必要な時に生産ができず、原材料が入荷するまで工場はストップすることになるでしょう。当然、店頭では欠品状態となります。

このような事態を防ぐため、調達物流では原材料の入庫・保管・仕分け・ピッキング・包装・出荷までをトータル管理することが必要です。これにより、生産計画を遵守したジャストインタイム供給を実現できます。

調達物流が適切に行われることにより、部品の欠品や商品の品切れ防止、物流の効率化によるコスト削減が可能となっています。

調達物流企業の抱える課題

輸送の多頻度化

調達物流企業が抱える課題には、輸送の多頻度化があります。ジャストインタイム供給を実現しようとすれば、1日に多頻度の輸送が必要となり、ドライバーの負担も増加します。

工場前は入庫を待つトラックが並び、近隣に渋滞で迷惑をかけることにもなりかねません。このような場合は、調達先からの受入先である物流センターを集約し一旦保管することで解決します。

生産工場近くに、原材料を保管できる物流センターをおけば、必要なタイミングで工場への入荷が可能です。

物流コストの増加

先ほど紹介したように多頻度配送が増えれば、人員不足や燃料費の増加などの問題が伴います。特に最近は燃料費が高騰していますから、物流コストも必然的に増加傾向にあります。

物流コストの増加は商品の販売価格に反映されるため、供給元・生産工場・物流企業だけの問題ではなく、私たち消費者の生活にも大きな影響を与えます。

調達物流をいかに無駄なく効率的に進められるかが、調達物流企業の大きな課題となっています。

人手不足

人手不足は多くの企業が抱える悩みです。特に、近年トラックドライバーの人手不足は社会問題となっています。

国内輸送の9割はトラック輸送が占めている我が国では、ドライバー不足は死活問題です。そもそも物流業界は、長時間勤務やハードな業務のイメージが強いことから若年層の担い手が減っています。

各企業では労働環境を改善し、物流システムの導入などで業務負担を減らす試みが行われています。

調達物流の課題解決に向けた富士ロジテックホールディングスの取り組み例

商品を製造するメーカーの多くは「リードタイムは短縮したいけど、在庫を抱えたくない」と考えています。また、少量多品種の原材料の管理が大変で煩雑になっているケースも多いでしょう。

そこで当ブログを運営する富士ロジテックホールディングスでは、調達物流や生産物流といったサプライチェーンの川上部分を対象にした、ロジスティクス改革の提案・実行に取り組んでいます。

《事例》
≪事例≫

上記の画像のように、工場構内作業のアウトソーシング化、原材料・部材などの在庫管理および生産ラインへの投入業務といった各種ソリューションを提供しています。

まとめ

本記事では、生産・製造に欠かせない原材料の調達に関わる物流、「調達物流」について解説しました。

物流とひとくちに言っても原材料の調達から消費者へ向かう動脈物流(調達物流・生産物流・販売物流)、また消費者からメーカーへ向かう静脈物流(回収物流・返品物流・廃棄物流)があるということをご理解いただけたかと思います。
さまざまな物流領域の違いについて理解を深めることで、物流業界への興味が高まった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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