私たちの暮らしの中にはさまざまなものが流通しています。コンビニやスーパーに行けば常に商品が並んでいますし、インターネット通販で買い物をすれば翌日には商品が届くことも当たり前の世の中になりました。
この当たり前を可能にしているのが倉庫業です。
倉庫業と聞くと「モノを保管するだけ」と思うかもしれません。しかし、倉庫業は保管のほかにもさまざまな業務を行っています。
本記事では倉庫業の種類や主な業務内容、倉庫業の現状などを解説していきます。
倉庫業とは
倉庫業とは寄託を受けた物品を倉庫で保管する事業です。経済活動や生活に欠かせない多種多様な物品を預かり保管することが役割です。
2002年まで倉庫業法によって規制があり倉庫業を営むには許可が必要でしたが、物流業務の効率化や競争力の向上を目的として登録制に変わりました。
参照:倉庫業法|e-Gov法令検索
近年では倉庫業も単に荷物を保管・在庫管理するだけに留まらず、検品や値札付け、包装、仕分など物流に関するさまざまな業務を担い、付加価値を提供しています。
倉庫業の種類
倉庫業には、大きく分けて「普通倉庫業」と「冷蔵倉庫業」の2種類があります。また、倉庫には様々な形態があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
普通倉庫業
「普通倉庫業」とは最も一般的な倉庫業の形態です。
保管するものは金属、原油などの「鉱業」や繊維・化学工業・紙などの「製造業」など。他にも家財、美術品、骨董品等など消費者の財産となるものも保管します。
この普通倉庫業も5つの種類に分かれています。
1~3類倉庫
「1~3類倉庫」は、1類、2類、3類の3つのグレードに分かれた建屋型の倉庫です。
- 1類:最もハイグレードな倉庫。防水・防湿・遮熱・耐火性能が必要。
日用品・紙&パルプ、電気機械などを保管。冷蔵倉庫、危険品倉庫での保管が義務付けられている物品の保管は不可。 - 2類:防火、耐火性能が不要な倉庫。ゆえに耐火性能が不要なもの(でん粉、塩、肥料、セメント)などを保管。1類に比べ保管可能な物品が限られる。
- 3類:ガラス類、陶磁器、鉄材など燃えにくく、湿気にも強い貨物が保管される。防火、耐火性能、防湿性能が不要。
野積倉庫
「野積倉庫」は堀や柵に囲まれた、野外で保管するための倉庫です。雨や風にさらされるため、影響を受けない下記のような保管物に限られます。
- 木材
- 鉱物
- 車両
- 保管に使用するパレット
野積倉庫は野外の倉庫ですが、倉庫業法で定められた規定があり、防火、照明設備の設置など、条件が設けられています。
貯蔵槽倉庫
「貯蔵槽倉庫」とは小麦や大麦、トウモロコシなどバラの物品を保管する倉庫です。農産物や飼料を保管するのに最適です。
サイロやタンクと呼ばれ、糖蜜など液体の貨物が保管されることもあります。
危険品倉庫
「危険品倉庫」とは、法律で危険物に指定された物資を保管する倉庫です。
保管する物資の性質によって、消防法、高圧ガス保安法、液化石油ガスの確保及び取引の適正化に関する法律など、法律の規定を満たす必要があります。
トランクルーム
トランクルームは、家財、美術品、骨董品、ピアノ、本など個人の財産を保管する倉庫です。自宅で入りきらないものを保管できるため、企業だけではなく一般の消費者にも人気の収納サービスです。
平成14年施行の倉庫業法により、トランクルームの認定制度が設けられています。条件を満たせば、国土交通省から優良倉庫として認定されます。
水面倉庫
水面倉庫はその名のとおり商品を水に浮かべて保管する倉庫のことです。代表的な保管物は、山で伐採された原木です。
原木は乾燥で割れることを防ぐため、水面で保管します。
冷蔵倉庫業
冷蔵倉庫とは、水産物や農産物、冷凍食品など10度以下で冷凍・冷蔵保存する必要のある商品を保管する倉庫です。
保管する商品の鮮度を保つため、最適な温度と環境で保管しなければなりません。野菜などの生鮮食品は0度前後、食肉・水産物は10度以下で保管します。
倉庫での主な業務内容
次に倉庫内で行われる主な業務内容を解説します。
検品
検品とは、入庫した物品に傷や汚れ、不良がないか、納品書と数に誤りがないかを確認する作業です。出庫時も行われます。
入庫
入庫とは、生産工場やメーカーなどから物品が倉庫に入ってくることです。送られてきた物品は倉庫の適切な場所に並べたり保管したりします。
保管
保管はその名の通り、物品を留め置くことです。物品の性質に合わせて温度調節を行い、安全に保管します。
ただ置いておくだけではなく、在庫管理や食品の賞味期限管理なども行います。
ピッキング
ピッキングとは、出荷指示書にある物品を保管場所から集めてくる作業を指します。顧客の注文情報を元に、必要な商品を必要な数量集めることが仕事です。
ピッキングは、自分で倉庫内を回り歩いて取りに行く摘み取り方式と、予め行先の決まっている箱に指定された商品を入れる種まき方式の2種類があります。
仕分け
仕分とは、倉庫で保管されている商品を決められたルールにしたがって仕分していく作業です。
流通加工
流通加工とは、生産者や工場から送られてきたモノを、荷主様の指示に従い販売業者や消費者に便利なように加工する作業のことです。
アパレル商品の値札付けやハンガー掛け、大量に送られてきた商品の小分けや箱詰めなどを行います。
出庫
出庫とは、商品や物品を倉庫から出す作業です。
倉庫業の開業には許可が必要!倉庫業法とは?
倉庫業を営むには、倉庫業法を守り、国土交通省の登録が必要です。
倉庫業法は下記のように記されています。
「この法律は、倉庫業の適正な運営を確保し、倉庫の利用者の利益を保護するとともに、倉荷証券の円滑な流通を確保することを目的とする。」
引用:倉庫業法第1章・第1条
社会のライフラインとして重要性の高い倉庫業は、利用者に不利益が起こらないよう詳細なルールが制定されています。倉庫業を営むには国土交通省の登録が必要なことも、倉庫業法で定められています。
未登録で営業を行うと法律違反となり、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が課せられます。また、未登録の倉庫で火災などが起きた場合、保険未加入で保障が適用されないなどのリスクがあります。
倉庫業法の対象となるのは、下記の4つに当てはまる企業や人です。
- 営業倉庫として登録済みの倉庫業者
- トランクルームなどを営む予定の人
- 倉庫業に近い業態を営む予定の人
- これから営業倉庫を運用する予定の人
以下のような行為は、倉庫業法に違反します。
- 未登録で営業する
- 他人の倉庫業に名義を貸す、又は営む
- 営業停止命令を無視して営業する
- 届出を出さずに商品を有償で預かる
- 施設検査を拒否する
- 営業廃止後30日以内に届け出を出さない
故意ではなく誤って届け出を出し忘れた場合も、罰則の対象となります。違反すると、罰則どころか営業停止などの処分もありますので、倉庫事業者は倉庫業法についてしっかり確認しておきましょう。
倉庫業の現状
近年、コロナ禍による巣篭もり需要の拡大でEC(ネット通販)の利用が急増しています。
ECの活況に比例するように商品の取扱個数が増加し、小口発送増加といった新たなニーズが生まれるなど、倉庫業を取り巻く環境にも大きな変化が訪れています。
外資系や商社が倉庫市場に積極的に参入し、アクセスの良いインター近くに巨大物流倉庫がいくつも開発されています。また、従来の倉庫業社も施設の新設や増床を進めており、物流倉庫開発ラッシュとなっています。
国土交通省が発表した「令和2年度倉庫事業経営状況調査」によると「普通倉庫業における面積の推移」では令和2年の所管面積は、前年度63,4896平方メートルに対し67,011平方メートルと増加しています。
自社で物流機能を持たない企業に代わって、ECの需要は令和3年以降も拡大傾向にあります。保管から検品、出荷まで一貫して行う倉庫業は、今後もより一層重要性が高まると考えられます。
これからの倉庫業に求められること
これからの倉庫業は、モノを保管するだけではなく「施設の多機能化・大型化」「人手不足への対応」「物流波動への対応」などが求められます。
施設の多機能化・大型化
倉庫業界では、近年、多機能化・大型化が進んでいます。その背景にあるのは、「人手不足」と「異業種の参入」です。
深刻化する人手不足を解消するため、倉庫の自動化・省人化は避けられない事態となっています。自動化するロボット機器を導入するためにはある程度のスペースが必要のため、施設の大型化が求められます。
また、最近では投資目的で倉庫業へ参入する異業種も多くなりました。商社や不動産・生命保険会社などが、新たに物流施設の開発を進めているのです。
その理由はいわずもがな、コロナ禍。コロナ禍になる以前までは、不動産投資といえばオフィスがトップ、続いてホテルという状況でしたが、近年ではオフィスを抜いて物流倉庫がトップとなっています。
参照:CBRE「COVID-19拡大で経済が停滞するなか、投資対象としての物流施設の人気は上昇」
コロナ禍によりインバウンド需要が消失し、消費の落ち込みからホテルや商業施設、オフィスへの投資が冷え込んだことが大きく影響しています。
一方で、物流倉庫はEC市場の拡大からニーズが増加し、成長を続けています。安定した収益を確保できると期待する企業が、投資目的で物流施設の開発を進めています。
人材不足への対応
近年、少子高齢化の影響から多くの業界が人手不足に陥る中、深刻な状況に陥っているのが倉庫業です。
国土交通省が2021年1月に発表した「最近の物流政策について」によれば、ドライバー不足を感じている企業は増加傾向にあり、労働力不足が近年顕在化しているとあります。
この問題を解消するためには、倉庫の業務効率をあげ、一人あたりの生産性を高めていかなけばなりません。そこで導入が進められているのが、倉庫の機械化です。
高機能のフォークリフトやマテハン機器を使えば、重労働や単純反復作業から解放されますし、省人化・業務効率化に繋がり人材不足を解消できます。
まとめ
本記事では、近年需要が高まっている倉庫業について解説しました。倉庫業は単に物品を保管するだけではありません。ご紹介したように最近ではEC通販の市場拡大を受け、検品や流通加工などを行う高機能倉庫が増えています。
また、安定した投資先としても注目が高まっており、異業種からの参入もあるなど盛り上がりを見せる業界です。
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