近年の物流業界では、業務量増加や人材不足といった課題が深刻化しています。もちろん、さまざまな対策が講じられており、その一つにICTの活用があります。

ICT、聞いたことはあるけど、ITやIoTとの違いがよく分からない方も多いのでは。

本記事では物流におけるITCについて、活用のメリットや事例、課題などを解説します。

そもそもICTとは?

ICTはInformation Communication Technologyの略で、日本語で「情報通信技術」といいます。デジタル化された情報を用いたコミュニケーションのことです。

国際的にはIT(情報技術)とほぼ同じ意味の扱いで、なおかつITよりも頻繁に使われています。近年の日本国内でも、官公庁や大手企業のWebサイトを中心に、ITがICTへ置き換わるようになってきました。

ちなみに、あらゆるモノをインターネットでつなぐ技術であるIoT(Internet of Things)とは別物です。ただ、デジタル情報の通信という意味で、ICTはIoTに不可欠の技術といえます。

*上記を踏まえ、本記事でもICTをITとほぼ同義の言葉として扱います

ICTを物流業界で導入するメリット

次に、ICTを物流業界で導入するメリットを見ていきましょう。

人手不足を軽減できる

1つめは人手不足を軽減できること。

物流業界は慢性的な人手不足に陥っており、約70%の物流会社がこの問題に直面しているという調査もあります*。このままだと、生産年齢人口が減少する将来にはさらに深刻化するかもしれません。人手が足りなくなれば物流が滞るため、人々の生活はもちろん、企業活動などにも影響が出ます。

こうした事態を避ける手立ての一つが、ICTの活用。ICTによる業務効率化で、少ない人数でも対処できるようになるのです。

具体的には、物流システムで在庫管理を自動化したり、ハンディターミナルで数十m先からでもバーコードを読み取れるようにしたり、シミュレーターで最適な積載方法を割り出したりするなどの例があります。近年では、AIによる配送ルート最適化や異常検知なども導入されるようになりました。

ただ、ICTは人手不足を根本的に解決する方法ではない点に注意が必要です。

*国土交通省/最近の物流政策について

業務量の増加へ対応できる

2つめは、業務量の増加へ対応できること。

前述のとおり労働力が不足している一方で、物流の業務量は増加しています。BtoC・BtoBの両方で起きていて、ニーズの多様化により、少量多頻度で扱うようになっているのです。また、時間指定配送や再配達がしばしば求められるのもあり、特にトラックドライバーの負担が増えています。

ICTを活用しての業務効率化は、こうした問題への対策としても有効です。多くの作業をこなせるようになるだけでなく、ミスの削減や長時間労働の是正にもつながります。

顧客満足度を上げられる

3つめは、顧客満足度を上げられること。

物流会社にとって最も求められる価値の一つは、配送の迅速さといえます。即日発送が当たり前になってきた昨今のEC市場などを鑑みるとなおさらです。

ICTを活用して配送のスピードや精度を高めれば、顧客からの信頼につながります。ほかにも、業務効率化により配送コストを削減できれば、その分を価格として顧客へ反映できます。迅速に、ミスなく、しかも安くサービスを提供することで、顧客満足度を高められるのです。

ICT導入は、物流会社だけでなく顧客にとってもメリットが大きいのです。

物流業界におけるICTの課題

ICTにはさまざまなメリットがある一方、いざ導入しようとなると、次のような課題も付きまといます。

拠点ごとに異なる作業のやり方

物流の現場では、作業のやり方が個別の拠点ごとに最適化されているケースが多々あります。共通の方法が整備されていないままだと、システムの導入が難しいのです。

まず導入に手間がかかりますし、運用の定着度に差が出て、効果測定や改善もスムーズに行えません。

今までのやり方が大きく変わると、現場からの反発を招く可能性もあります。

ICT活用のための従業員教育

ICT活用のための従業員教育も課題です。

日頃の業務に忙しい現場だと、システムや端末の使い方を新しく覚える余裕がないかもしれません。なんとか研修にこぎ着けたとしても、必要性を理解し操作をマスターしてもらうまでに膨大な労力がかかるおそれも。

日々の作業を続けながらの新システムの教育は、企業にとっても従業員にとっても大きな負担となります。

富士ロジテックホールディングスのICT活用事例

ICTの活用事例として、本ブログを運営する富士ロジテックホールディングスの物流支援サービスを紹介します。

クライアントのG社様では、工場・支店・全国の店舗が、それぞれ個別に製品在庫を管理していました。弊社で現状を分析した結果、現行の体制だと、出荷頻度が低い製品の在庫を多く抱えている拠点がある、逆に頻度の高い製品の安全在庫水準にバラツキがあるといった課題が判明。また、欠品回避のために支店間で製品の横持ち輸送が発生しており、これによる工数の増加や輸送効率の低下も見つかりました。

そこで弊社は、次のような改革プランを提案しました。

  1. 倉庫管理システムを導入し、製品在庫の全社的な一元管理化を行う
  2. 支店を経由せず、工場周辺に用意する倉庫から全国の店舗へ製品を直接供給する
  3. 工場や支店でのセット加工業務を、倉庫での作業に切り替える

これらの結果、G社様は

  1. 工場・支店・店舗といったサプライチェーン上の在庫を大幅に圧縮できた
  2. 横持ち運送コストを削減できた
  3. 物流機能をなくしたことで、支店は営業活動に特化できるようになった
  4. セット加工機能を切り離したことで、工場は生産業務に専念できるようになった
  5. 工場倉庫~店舗への直送化で、より鮮度の高い製品を市場に投入できるようになった

などの成果を実現しました。

事業拡大とともにサプライチェーンが複雑化し、在庫の実態を把握しきれていない企業は少なくありません。本事例は「在庫管理のあるべき姿」をICTで実現したものとして、重要な意義を持つと考えています。

まとめ

本記事では物流業界におけるICT活用について、そのメリットや課題、事例などを解説しました。

物流といえば力仕事のイメージがある方も多いと思いますが、実際には先端技術も積極的に取り入れられています。最近ではピッキングロボットも登場しており、費用やスペースなどの課題はあるものの、普及すればより省力化が進むでしょう。

最新テクノロジーを活かして物流の未来を担う。もしそんな仕事に興味を持っていただけたのであれば、本ブログを運営する富士ロジテックホールディングスで働いてみませんか?中途採用も積極的に行っていますので、ぜひ採用サイトをご覧ください。