「明日デバンニングお願いします!」「デバンニング終わったら連絡ください」など、物流現場でよく耳にする「デバンニング」は、商品の輸入に欠かせない作業です。
しかし、デバンニングの意味や作業手順などが実はいまいちわかっていないけど、今さら誰にも聞けないという方も中にはいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、デバンニングとはどのような作業なのか、意味や内容を解説し、課題や効率よく行うポイントも紹介していきます。
物流用語「デバンニング」とは
デバンニングとは、輸入貨物をコンテナから積みおろす作業のことです。
輸出入貨物は必ずコンテナの中に商品を積みますから、商品をトラックに積み替えるには、必ずデバンニングが必要なのです。
ちなみにデバンニングは英語で「Devanning」、通称「デバン」とも呼ばれています。
デバンニングの対義語は「バンニング」
デバンニングは荷物を積みおろすことですが、一方で荷物を貨物へ詰め込む作業のことを、「バンニング」と言います。デバンニングの対義語です。
バンニングはデバンニングと違い、荷物を輸出する方ですから、輸送中に商品がダメージを受けないよう、コンテナの状態をチェックし荷崩れがないように注意しなければなりません。
重さに偏りが出ないよう、荷重の分散や重量のある荷物は床面に近いところに積むなどの配慮が必要です。
デバンニングの基本的な作業手順
デバンニングの作業は下記のような流れで行われることが多いです。
- コンテナを開ける
- 必要に応じてスロープを設置
- 貨物の状態をチェック
- フォークリフトや手降ろしで荷降ろし開始
- 荷降ろし完了後コンテナ内を清掃
- コンテナを閉める
フォークリフトを使うなど、デバンニング作業は危険を伴うため、複数人で作業することが多いです。商品へダメージを与えないよう、丁寧な作業を求められます。
デバンニング作業にありがちな課題
日本は、2020年の時点で中国・アメリカ・ドイツに続く世界第4位の貿易大国です。2021年(令和3年)の輸入額は68.0兆円(前年比24.6%)となっており、大きな伸長率を見せていることが分かります。
この数字に比例して、輸入時に必要な作業「デバンニング」のニーズも今後ますます高まっていくことが予想されます。
しかし、デバンニング作業には下記で紹介するような3つの課題を抱えています。
①過酷な労働環境
②長い作業時間
③作業中の事故
作業を行う際には十分注意して取り組まなければ、大きな事故につながる可能性があるためリスク管理を徹底する必要があります。
ここからはデバンニンが抱える3つの課題について詳しく解説していきます。
①過酷な労働環境
デバンニング作業は、過酷な労働環境であることが問題視されています。
特に注意すべきは熱中症です。デバンニング作業が行われるコンテナ内は、夏場に50度以上まで上昇することも珍しくありません。炎天下に晒された車の温度が上がりやすいように、真夏のコンテナ内部は異常な暑さです。
このような中で重労働を行わなくてはならないため、熱中症対策が必要です。コンテナの上部を水で流して冷やしながら作業を行うなど、従業員の体調管理に注意しましょう。
また、コンテナ内に荷物が隙間なく詰め込まれている場合は、高所での作業が必要です。暑さに加え、高所作業、落下物にも注意しなければならず、ケガや事故の発生リスクも高くなります。
デバンニングは一人で行わないなど、作業場のリスク管理を徹底しましょう。
②長い作業時間
デバンニングの作業は過酷な上、作業時間の長さも問題となっています。しかもデバンニング作業にかかる時間は、契約で決められているため時間を超えると遅延金が発生するなど、過酷な現場となっています。
多くは、20フィートのコンテナで1時間、40フィートで2時間を目安として人員を配置します。暑くて(冬場は寒い)危険な作業に加え、制限時間内に業務を終わらせる必要がありますので、焦っていると事故の発生率が上がってしまいます。
過酷な労働環境で1時間以上も動き続けるハードな作業は、誰でもできるものではありません。
③作業中の事故
上述したように、熱中症の危険や高所での作業、過酷な環境で長時間の業務など、デバンニングは作業中に事故が起きやすい現場となっています。
作業中に事故が発生すると、作業員が怪我や命の危険に晒される可能性があります。また、うっかり荷物を落として商品が破損するなど、ミスの発生も多くなるでしょう。
箱に傷がつくだけでも商品価値を失うものがあるため、作業中の事故が起きないよう注意しなければなりません。
デバンニング作業を効率的に行うには?
過酷な現場で効率よくデバンニングを行うには、下記の2つの対策が有効です。
- 作業環境を整える
- 作業ロボットを導入する
詳しく解説していきます。
作業環境を整える
デバンニングの課題を解決するには、作業環境を整えることが大切です。
まずは何より作業員の安全を確保することが先決。安全に作業できるアイテム(ヘルメット・安全靴など)やしっかりとしたルールやマニュアルを制定しましょう。
荷物が破損した場合も作業環境が整っていれば、貨物保険を受けるための手続きもスムーズになります。
また、作業員の負担を軽減するアシストスーツの導入も効果的です。アシストスーツは中腰姿勢での重い物の持ち運びを補助し、主に腰回りの負担を減らす衣類型の装置です。
デバンニングの際に導入することで、作業にかかる身体的な負担を軽減でき、従業員の怪我の防止、作業時間の短縮にもつながります。
作業ロボットを導入する
前述した環境・作業問題に加え、人手不足も問題となっている近年ではデバンニング作業の省人化・省力化が注目されています。
例えば米国のBastian Solutions LLC社が手がけるデバンニング・バンニングロボット「ROBOTIC TRUCK TRAILER」は、これまで手積みしていた荷物を3秒間に1個のスピードで取り扱いが可能となっています。
作業ロボットを導入して、人の手ではなく機械が作業するようになれば労働力負担が減り事故やミスの発生リスクも軽減できるでしょう。また、人件費コストの削減と業務効率アップも期待できます。
まとめ
本記事では、輸入時に欠かせない作業「デバンニング」について解説しました。
デバンニング・バンニングはフォークリフトを使って荷物を積み下ろしすることを指します。貿易大国の日本では、今後もニーズが高まる業務の1つです。
しかし、過酷な労働環境や危険を伴う作業のため、ロボットの導入を検討するなど環境整備とリスク管理が必要です。大きな事故やトラブルの発生を未然に防ぐためにも、ゆとりを持った人員配置と安全対策やルール・マニュアルの策定を行いましょう。