中国でビジネスをする際には、この国特有の制度を理解しておかないと、想定外の税金を請求されたり、そもそもビジネスの許可が下りなかったりする可能性があります。
その制度の一つが「物流園区(ぶつりゅうえんく)」。馴染みのない方は多いのではないでしょうか。
本記事ではこの物流園区について、概要や役割などを解説します。
中国の物流園区とは?
物流園区とは、中国の保税区内または保税区に隣接する港湾区域内に設けられた、税関特殊監督管理区域のことです。といっても、これだけだと分かりませんよね。
そこで、まず「保税区」の概要を紹介してから、物流園区について解説します。
保税区とは
保税区とは、税関による監督の下、輸入品が一時的に保管される場所のこと。保税区内の倉庫(保税倉庫)に貨物を置いておくと、国内にありながら輸入前の扱いとなり、関税などの税金が課されません。
関税を保留するという意味の通り、保税はあくまで一時的な措置。注文が入り保税倉庫から出荷する際には関税などがかけられます。
また、保税区は加工拠点としての機能も持っており、区内で加工・製造された製品に関する輸出入許可や税金が優遇されます。
保税区の目的は、貿易を盛んに行ってもらうこと。日本では東京・横浜・名古屋・大阪・長崎など、中国では大連・青島・上海・広州・福州などにあります。
<保税区の主なメリット>
- 関税が一気にかからないため、費用負担を分散させられる
- 大口の保管もできるため、一つひとつの輸送コストを抑えられる
- 国内に保管しておくため、迅速に配送できる
<保税区の主なデメリット>
- 日本国内から直送するのに比べ、在庫リスクが高くなりやすい
メリットとデメリットを鑑みると、現地で売れる商品を大量に取り扱うのに向いている方法といえます。
物流園区とは
物流園区は、保税区や中国国内のルールからくる不便さを解消するために作られました。
同国では、保税区や国内にて作られた製品を、日本企業(を含む外資)の名義で国内流通させる際、いったん製品を海外へ輸出し再輸入しなければなりません。保税区や同国内から直接届けてはいけないのです。
日本企業の名義で販売する場合の商流は、日本→中国になりますよね。しかし、保税区や同国内から直接届けるとなると、物流が中国→中国になります。この商流と物流の不一致が、中国国内のルールに反するのです。
したがって、商流と物流を一致させるために、いったん輸出し再輸入するわけです。これなら、日本→中国という物流が成り立ちます。
とはいえ、いざ実行するとなると非常に面倒です。中国に法人を設立する手もありますが、やはりハードルの高さがネックになります。
そこで2004年に、物流園区の第一号が上海に設置されました。
物流園区に入った貨物は、搬入の時点で輸出されたとみなされます(みなし輸出)。よって、物流園区に搬入すれば、日本→中国という物流を中国国内で成立させられるのです。
ニーズの拡大とともに、現在では上海のみならず、大連・天津・青島・張家港・寧波・アモイ・深センの計8箇所に設けられています。
物流園区の主なメリット
物流園区の主なメリットは次の3点です。
輸送にかかる手間や時間を削減できる
貨物を海外へ出す必要がなくなるため、輸送にかかる手間や時間を削減できます。その分、輸送コストも減らすことができ、商品価格や送料を安く抑えられます。
外貨決済ができる
物流園区では外貨決済ができます。手数料を削減できるほか、人民元決済でなくとも園区外の企業と取引できるため、ビジネスの拡大につながります。
増値税の還付をすぐに受けられる
増値税は日本における消費税のこと。そして、中国国内で作られた製品については、輸出すると「輸出品にかかる増値税」が還付されます。
ただ、実際に輸出し申請もするとなると、どうしても還付時期が遅くなります。一方、物流園区では区内に貨物が入った時点で輸出となるため、増値税の還付がすぐに受けられるというわけです。
中国生産者側の事情ではありますが、キャッシュフローを考えると非常に大きなメリットといえます。
物流園区の主な注意点
物流園区には次のような注意点があるので、メリットとあわせて覚えておきましょう。
物流園区内での加工はできない
保税区は加工拠点の機能も有していると先述しましたが、物流園区にはありません。物流園区は、あくまでも物流のための拠点です。
運用が立地によって異なる
物流園区の運用方法は、立地によって異なります。上海ではOKだったのにアモイではNGという可能性があるため、現地のルールをあらかじめ確認しておかなければなりません。
また、運用に関するルールは改正されやすいので、情報収集はこまめに行いましょう。
保税区と物流園区の違い
ここまでの内容を踏まえ、物流園区と保税区の違いを整理しておきます。
- 保税区への入庫=輸出入とは完全にはみなされないが、物流園区ではみなされる
- 保税区は加工拠点としての機能を有するが、物流園区は有さない
- 保税区では外貨決済ができないが、物流園区ではできる
- 保税区では増値税還をすぐに受けられないが、物流園区では受けられる
そもそもの仕組みも異なります。
- 保税区:関税を保留しつつ加工と保管を行う
- 物流園区:輸出とみなして保管を行う
まとめ
今回は中国の物流園区について、意味や仕組み、メリット、注意点などを解説しました。
中国で日本企業がビジネスをする際には必須となる知識です。少しややこしいので、分からないことがあれば、上記の解説を読み返してみてください。
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