2000年ごろから使われるようになった「トレーサビリティ(traceability)」という言葉。原材料の調達にはじまり、生産、出荷、消費、そして廃棄に至るまでの一連の過程を、追跡可能な状態にすることを意味します。
製品の品質や信頼性の向上といった観点から重要性が増しており、食品や電子機器、医薬品などのさまざまな業界で行われるようになりました。
そんなトレーサビリティについて、本記事では概要や目的、求められる理由、事例などを紹介していきます。
トレーサビリティとは?
冒頭で述べた通り、トレーサビリティとは、材料調達→生産→出荷→消費→廃棄という一連の過程を追跡可能にすることです。その上で、各段階において「いつ・誰が・どこで・どうしたのか」を可視化します。
トレーサビリティの目的と役割
トレーサビリティは、主に以下のような目的と役割で導入されます。
品質の強化
トレーサビリティが機能すれば、各工程における責任の所在が明確になり、現場の意識向上につながります。また、ミスや不良の発生しやすい工程が分かり、改善策を立てやすくもなります。これらの結果、製品の品質強化が見込めます。
信頼性の向上
ただ安全を訴えるのではなく、安全である証明をトレーサビリティによって行うことで、顧客からの信頼性がアップします。製品のみならず、会社そのものの信頼性向上にもつながります。
マーケティングの強化
トレーサビリティに取り組むと、最終消費者の情報も把握することになります。これを各工程の事業者間で共有できれば、より高精度なマーケティングが可能となり、一層の品質向上が見込めるようになります。
トレーサビリティが求められるようになった理由
トレーサビリティの概念自体は戦前から存在していましたが、日本国内で広く知られるようになったのは2000年代はじめに起こったBSE問題がきっかけです。
日本では2004年から、食材の安全性の確保と証明のために、タグを用いて牛を一頭ずつ個体管理することが義務付けられました。牛ごとに個体識別番号が割り当てられ、出生から屠畜、そして販売までの履歴を記録するようになっています。
これ以降、牛以外の食品でもトレーサビリティが導入されるようになりました。また現在では、パッケージに印字されたQRコードをスマホで読み取れば、消費者も手軽にチェックできるサービスも登場しています。
トレーサビリティの事例
上記のほかに特筆される事例は、自動車や家電などのリコール対策です。
製品に不良や事故があった場合、リコールで製品や部品の無償交換をしなければなりません。その際にメーカーは、不具合が発生した工程、不具合の原因、消費者の手にわたった数などを解明する必要があります。
販売形態の多様化により消費者に届くまでの道のりが複雑になっている今、リコールを迅速に行うためにはトレーサビリティが不可欠になっているのです。
トレーサビリティの種類
トレーサビリティと一口に言っても、追跡の仕方によって以下のように種類が分かれます。
チェーントレーサビリティと内部トレーサビリティ
材料調達→生産→出荷→消費→廃棄の過程を追跡可能にする一般的なトレーサビリティは、チェーントレーサビリティという種類になります。
一方、1つの企業や工場、物流拠点といった特定の範囲内で実施されるトレーサビリティを内部トレーサビリティと呼びます。
トレースフォワードとトレースバック
トレースフォワードとは、材料調達→生産→出荷→消費→廃棄の過程を時系列順に追跡すること。不良部品が使われている製品をピンポイントに特定でき、特にリコール回収の際に効果を発揮します。
逆に、時系列をさかのぼることをトレースバックと呼びます。問題が露見した時点から、工程を一つひとつ巻き戻していくため、原因究明に効果的です。
トレーサビリティには事業者間の連携が不可欠
トレーサビリティの実現には事業者間の連携が不可欠であり、これが大きな課題にもなっています。
価値観や認識を共有した上で、統一的なルールを整備し、システムを整備していく。利益へ直接つながりにくい取り組みなので、コストの負担に二の足を踏む業者も出てくるでしょう。
となれば、費やすもの以上の恩恵を提示し、考えのすり合わせをしていかなければなりません。これが困難なことは想像に難くなく、理想のトレーサビリティにおけるネックといえます。
トレーサビリティとブロックチェーン
トレーサビリティにおける新たな試みとして、ブロックチェーンの導入が挙げられます。
ブロックチェーンとは、簡単に言うと「個別のデータを鎖のようにつなぎ合わせ、できあがった1つのデータを複数の場所で分散管理する仕組み」のこと。
各事業者がブロックチェーンを共有し、そこへトレーサビリティの情報を書き込み管理していくことで、工程ごとに個別管理される従来の方法に比べて格段に早い追跡が可能となります。
また、分散管理であるブロックチェーンには権限の大きな管理者が存在しないため、記録の改ざんが困難です。情報の一元管理と共有だけなら既存のクラウド技術で事足りますが、情報の真正性に関してはブロックチェーンでないと担保できません。
このような特徴により、従来のトレーサビリティ以上の付加価値を付けた販売が可能となるのです。安全志向の高まる昨今の市場において、ブロックチェーンは極めて重要な要素といえます。
まとめ
今回はトレーサビリティについて、概要や目的、事例、ブロックチェーンとの関連など解説しました。
クリーンさを証明するトレーサビリティは、情報の開示や共有が容易になった今、企業が責任を持って取り組むべき課題といえます。
生産・消費・廃棄の各過程をつなぐ物流会社であればなおさらで、本ブログを運営する富士ロジテックホールディングスも積極的に取り組んでいます。
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